その2 堅い音と、柔らかい音、優しい音?

 
つづき。
 
音に関して評価する場合に、「堅い音」「突き刺さるような音」とか、「柔らかい
音」「耳当たりのいい音」「長く聴いても疲れない音」などといった表現をされる
ことが、しばしば見かけられる。
 
「堅い音」ってなんだろう。何となく分かるような気もするが、硬いものを叩いて
出る音は、まあ普通は堅い音になるのだろうか。しかし、金属の場合はキーンとい
う音がするものもあれば、全然響かず、ガンガンとか、ガシガシとかいう音がする
ものもあるだろう。どちらにせよ、硬い音ではあるのだろう。
 
「柔らかい音」は、いうまでもなく刺激の少ない伸びやかな音、軽いタッチの音、
撫でるような音などを指すのだろうか。
 
「優しい音」にはかなり主観的な感じ方が含まれているように思う。
 
一時は、堅い音を柔らかい音にするのは、簡単に出来るが、柔らかい音を堅い音に
するのは難しいと思っていた。だから、堅い音はむしろ、情報量が多く、原音に近
いのではないかなどと思っていたものだ。だから堅い音の出るものを選んでおいて
その音の通る通路に色々と入れてやれば、柔らかい音になるのだから、堅い音を選
ぶのが正解だと思っていた。
 
しかし、よくよく考えてみると、そんな単純なものではないという事が分かってく
る。柔らかい音と一般?に言われている音は、実は千差万別、単に堅いものの角を
落としただけでは、心地よい音になるとは限らない。それでできるのは、むしろ、
ぼやけた音と言った方がいいかもしれない。
 
一方、柔らかい音を堅い音にするには、今度は尖らせてやればいいと単純に考えて
はいけない。単に強弱をつけて、尖らせてやるだけでは、別の部分まで音が歪んで
しまう。大体、どこを尖らせたらいいのか情報が抜け落ちてしまっているので、推
測で、やってみるしかない。
  
柔らかい音は堅い音にはない情報を持っているし、堅い音も柔らかい音にない情報
を持っている。
 
不思議なのは、なぜそれぞれの音響機器毎に、柔らかめだったり、堅めだったりす
るような個性をもっているのかだ。
 
周波数特性を調べればある程度はわかるのかもしれないが、高周波が多いからと言って堅い音になるわけでもないだろう。

残念ながら、音の研究を生業にしているわけでもないので、これ以上のことは分か
りかねるが、音響部品の、周波数特性が広域までフラットなものを使用すれば、堅
くなり、比較的フツーなものを使うと柔らかくなるというのは、ちょっと違うので
はないかと思っている。これは、柔らかい音というよりも寧ろ丸い音、ぼやけたは
言い過ぎだとすれば、フォーカスの甘い(おんなじか!)音と言った方がいい様に
思われる。(フォーカスっていうと今度は解像度の話になってしまうが、ここでは
それはさておく)
 
というわけで、今は、角を落としただけの柔らかい?音よりは、堅い音の方がまだ
ましかなとは、個人的に思っている。本当は、ドラムの音が「ドン」と鳴るよりは
「ドウン」と鳴る方が好きなのだが、どちらも痛し痒しといったところか。