五教科七科目か、二教科選別か。

 結局、たった一人の人間の出来る事など、取るに足らない小さな事に過ぎなかったりする訳だが、それも結局使う人がどれだけそれを理解して、上手に使ってくれるかと言うのは、実は大問題だったりする。時には1が、10にも100にも、いやもっと1000以上になったりするものさえあると言える。それが魅力で、偉くなろうと思ったりする人もいるだろう。

 「広く浅く」とか、「狭く深く」とか言うが、それも本人が一生懸命やっていて、言われた事をこなすだけの力がありさえすれば、どっちだって、大した違いは無いのではなかろうか。

 どちらかと言えば、「広く浅く」の方が、あまり良い意味に取られない事が多いようだが、広い見識を持つと言うのは、実は大変な事である。ただ単に、「あれもやりました、これもやりました。」と言うのは、確かにそれだけでは使い物にならない感が大きい。

 だが、実は、どの分野でも、そこから外へ出て見ないと分からない事と言うのは、結構重要だったりする。

 LPレコードが、CDに替わって、「デジタルだから音質の劣化は無い。」と、一時はまことしやかに言われていた物だが、最終的には、アナログ音声となって、人の耳に入る限り、どこかの部分で、ノイズが乗る可能性はあり、情報も、アナログからデジタルへ、デジタルからアナログへと変換するときには必ずロスがある。

 デジタルで、データ伝送しても、アナログノイズが混入し、最終的にアナログに戻すまでには、更に色々な所でノイズが乗る可能性があり、結局はアナログ時代と同じようなあらゆる部分に良い素材を使ったり、ノイズをカットする回路を組み込んだり、そういう意味では、デジタル時代も、アナログ時代の技術を、生かすことは可能なのである。

 しかし、デジタル回路しか設計した事のない人にとっては、データエラーが無い限りは、決して音質は劣化しない物と思っていた人も多かっただろう。

 私も、CDプレーヤーに、LPレコードのときに使ったような、スタビライザー(レコードの上に乗せるおもりのようなもので、これを乗せる事により、ディスクのゆがみが押さえられ、モーターの回転も安定する効果がある)を使って、果たして効果が有るのかと半信半疑で試して見たのを憶えているが、実際乗せて見ると音がすっきりした感じになり、何度も付けたり外したりして、間違いなく変わる、と、最終的には確信したのだった。

 その後、色々なところから情報を仕入れ、デジタルデータそのものがエラーになるのではなく、アナログノイズ(モータから出るノイズや、回転のブレによるジッターなど、その他諸々)が、ほんのちょっとした隙間から、混入し、色々な形で、音質を劣化させているらしい、と言う事を何となく納得したのだった。

 広く見ていれば、自然界には、ノイズというか、人間にとっては、不要な物、困る物などいっぱいあり、それをなくす事なんて出来やしないのだと言う事は、当たり前のようにわかるのだが、狭い分野に限って見ると、「ゼロ」にすることが、可能なんじゃないかと過信したりする。つまり、努力が足りないのだと考えてしまう。

 もちろん、そういう面も有るのは否定しないが、それに固執しずぎると、「無駄に一生懸命」と言われてしまうような事態にならないとも限らない。

 出来れば、時には思い切り深く追求し、時には、冷めた目で全体を見渡して見るのも悪くないと思うのだが、それだけの心の余裕が取れるかどうかは、また、難しい問題だ。