写真について。

 学校の図画の時間に教わるのは、水彩画の描き方だけで、クラブにでも入っていなければ、油絵を描いたことがある人は少ないのではないか。

 水彩画は、油絵に比べ、淡い色合いを出すのが得意なようで、遠くの霞んだ風景や、草花を書くにしても、はっきりした原色の物よりも、白い花とか、ピンクの花とか、青緑の若葉などが、書きやすいような気がする。(それでも、乾いては塗り、乾いては塗りすれば、かなり重厚感を出すことも不可能ではないと思うが)

 子供の頃、あまり絵を書くのは、得意ではなかったが、その一つに、水彩画は、色を上手く混ぜないと、すぐ濁ったような色になってしまい、どちらかと言えば、はっきりした絵の方が書きたかったので、何となく苦手感が拭えなかった。形をまねるのはそれ程、悪くは無かったと思うが。

 少し年を取ってきて、油絵を良く見かけるようになって、不思議に感じたのは、油絵は近くで見ると、色合いや、色と色の境目がはっきりしているのだが、ちょっと見では、物の形をちゃんと現していないように見えた。例えば建物の窓や、木の葉なども、一枚一枚丁寧に細かく書いてある訳ではなく、なんかベタベタと大雑把に塗りまくっている様な印象さえ憶えた。

 しかしそれが、ちょっと離れて見ると、ちゃんとした建物に窓がついていて、建物の陰影などもきっちり再現されていて、写実的に見える。それが不思議だった。

 どうしてそうなるのか、自分なりに納得するようになって来たのは、かなり後のことだった。(大体、油絵なんて未だに描いたことも無い)。

 どういう風に納得したかと言うと、(これが本当に正しいのかは実に怪しいが)油絵の絵の具は、べたっと描くと、そのままのタッチが残り、キャンバスの表面はデコボコしていたりして、水彩画のように交じり合ったり、染み込んだりしにくい。

 このおかげで、エッジのはっきりした絵になりやすく、高いコントラストを得る事が出来る。この高いコントラストが、建物の輪郭や、光の当たっている明るい部分と当たらない暗い部分などを、はっきりとさせ、遠くから見たときに、精細感があるように、感じるのではないだろうかと言う事である。

 一つ一つをきちんと細かく書いていなくても、濃淡の激しい部分、色の変わり方が大きい部分をはっきり映し出せば、全体として、精細感を保つ事が出来るのではないか。(それだけでもないだろうが)。

 何故そう思うようになったのかは、色々な事が影響していて簡単には説明できないのだが、一つには、JPEG画像ファイルのデコードプログラムを自分で作ったときの経験と、自分でデジカメを買って、画質を比較したり、撮った画像を拡大して見たりしているうちに、何の絵だか分からないくらいに拡大して見ると、ちょうど油絵をベタベタと塗ったキャンバスを真近で見ているのと、そっくりに感じたのが、きっかけだったりする。(これもデジカメメーカーによって違ったりするが)

 また、JPEG画像で輪郭強調したりすると、(別にJPEGに限らないが)エッジの部分を際立たせようとして、コントラストの高い部分に、白い輪郭線のような物が入ったりする。輪郭強調すると、精細感が上がったような気がするが、実際はこのように、境界部分をはっきりさせているだけである。

 最近は、写真や、絵に関しても、素人でも色々なエフェクトをかけたりする事が、パソコンソフトで簡単に出来るようになって来ていて、色んな分析?(それ程の物でもないか)が可能になって来ているが、昔の人は、経験的に、油絵と水彩画の違いを良く分かっていて、油絵はこういう風に描けば、より精細感が上がるんだと言う事を、理論と言うより実践で学んでいたのだろう。

 わざとタッチを残してデコボコにして見たり、思い切って色の差をつけて、その間を、人が目で見て自然に補間というか想像させるような書き方をしたり、筆を動かした筋を残して見たり、何度も厚く塗りたくって見たり、色々な技法を編み出して使って描いたのだろう。

 単なる素人の想像で申し訳ないが、まあ、今言ったような事も、きっと今のデジタル全盛時代のテレビなどの画面映像作りにも、きっと密かに?色々と応用されているに違いないと思ったので、ちょっと訳知り顔で書いてみたのだった。