ステレオヘッドフォンについて。

 もう何ヶ月前になるか忘れたが、ヘッドフォンが一つ、古すぎてプラスチックの部分が劣化して、ボキッと根元から折れた。元々安いやつで、なんと概観は、20年以上変化していないんじゃないかと思われる程、昔のものとデザインがそっくりで、音もこもった感じであまり好みではなかったが、買ってしまったので、仕方なく音楽以外の用途に使っていたものだった。そこで、念願の新しいヘッドフォン(音楽が心地よく聴けるようなもの)を買うべく、色々と物色していたのだが、視聴できるものは限られていて、視聴できるものでも、いまひとつ再生環境が良くなく、それぞれのヘッドフォンの良さを引き出していない物ばかりで、どうも気に入ったものが見つからず、(実際、一万五千円位するもので、視聴できるものがあったが、どうも音が悪くて、とてもまともにCDの音をそのまま再生できているとは思えないものがあって、その後、ほんの一時期だけ、まともに再生できているらしいと思われることがあったが、それでもあまり良い音ではなかった。あまり売る気がないらしい。またはカタログスペックだけで買えということか。)仕方なく、値段とカタログスペックとインターネットでヘッドフォンを評価しているホームページなどを参考に、機種を決めて買ってしまった。
確かに、安物と比べて、音は良い(当たり前でスマン)。楽器の音の輪郭も、高音のハイハットの響きも、濁りがなく、すっきりした感じだ。特に、シンセの野太い音などは非常に気持ちよく鳴ってくれる。でも、同じメーカーの1980円位で買った、これも10年以上使っているものなのだが、それと比べて、どこか物足りないものがある。何故だかいまだに分からないが、安物の方は、シャリシャリとした音なのだが、それが何故か輪郭や音の定位を良くしている様に聞こえるのだ。空間的にもそれ程でもないのだが、広がりが感じられる。一方高い方は、楽器一つ一つを聞かせるには良いのだが、トータルでは、どの音も良く出ている(残念なことに低音は、綺麗に鳴ってはいるのだが、音量が足りない(時と場合にもよるが)のが欠点か)のだが、楽器の位置関係がはっきりしない。とにかくみんな近くで鳴っているようで、音量を上げるとごちゃごちゃしたような感じになってしまう。空間的広がりがどうしても物足りない。ふつう、高い機種の方が、こういうことは得意だと思うのだが、まあその他に、音源(プレイヤー)もヘッドフォンを生かし切れるだけの力を持っていないこともあるかもしれないが。このヘッドフォンはあるホームページで比較的評価が良かったので、50mmの大型のドライバーユニットを使っていることもあって、低音には強いだろうと思っていたのだが、意外にも、前にでてこない。プレイヤーにBASSブースター機能がついているので、あまり原音をいじるのは好きではないので使わなかったが、試しに使ってみたら、昔のイコライザーなどとは違って、他の音への影響を最小限に抑えるような工夫がされているようで、結構気持ちよく聴けるようになった。しかしやはり、空間の広がりがあまり感じられない。一つ一つの音をくっきり再生するのと、広い空間(コンサートホールなど)で音楽を聴いているような印象を与えるのは、ある意味、トレードオフなのかとも思ったりするのだが、まだまだ、沢山のヘッドフォンを聴いたわけでもなく、高級ヘッドフォンの世界にほとんど足を踏み入れていないくせに、こんな批評をするのは本当はおこがましいことこの上ないのかもしれないが、感じたままを敢えてメーカー、機種名は挙げずに書いておくのでお許し願いたい。(それでも一応某有名メーカーの3万円台のヘッドフォンも何機種か視聴した。この時も、明らかに、カッチカチの輪郭はっきりの低音もしっかり出まくりのものと、ちょっと優しめの、しかし空間の広がりは明らかに心地よく広がってくれるものとの二種類があり、これはそれぞれのメーカーあるいはシリーズのキャラクターで、やはり、お互い相容れないものがあるのではないかと思った。もちろん一万円台のものよりは空間的広がりは大きくなっていると思われるが。)
よく、JAZZ、クラシックに向いているとか、ポップス、ロックに向いているとか、評価されているが、私個人としては、ジャンルというより、曲そのものがどんな曲で、自分がどんな風に聞きたいのかというのが一番重要なのではないか(あくまで自分がそう思っているだけで他人に押し付ける気は全くない)という気がしてきている。本当は曲によって気に入ったヘッドフォンを分けて聴くのが一番ではないかなどと思ったりもするのだが、お金持ちの贅沢か、または単なる偏屈か。あくまで自分が、そうしてみたいと思っているだけなのだが、いろんなヘッドフォンを持っている人はきっとそんな使い方をしている人もいるだろうなと思うきょうこのごろである。だから必ずしも全てのヘッドフォンを並べて、比較して点数をつけてもそれで満足のいく視聴環境が作れるかどうかは、ちょっと、自分としては疑問だなと思った。あくまで自分が、であるが。